童話などで「親孝行な息子は幸せになり、親不孝な息子はひどい目に遭いました」などという内容の話があったりします。
先人たちもいっているほど親孝行には良いことがあっても悪いことはないといわれ、このような内容の話は日本だけではなく世界中に存在します。
親孝行は絶対に必要だと思っている国も多くあり、国によっては親孝行を義務化している国や法律にしてしまう国もあるのです。
親孝行をしないとどのような事になってしまうのでしょうか?
世界の親孝行事情を紹介します。
目次
親不孝は法律違反?
親孝行は「親を大切にして真心をもってよく尽くすこと」でありますが、親孝行をしているか?といわれるとできていないと感じることも多いでしょう。
何かをすることが親孝行であり、何もしないことが親不孝と考えると思いますが、実際に親不孝といわれる要素は以下の通りです。
- いつまでもフラフラしている
- 反社会的な行動(犯罪行為など)を行う
- 親より先に亡くなる(自ら命を絶つなども含む)
- 親に対する暴力行為
- 親を裏切る行為
親が心配することや親を悲しませるようなことを行う人が親不孝ということになります。
このような行為をして親を悲しませないようにすることが必要ですが、国によっては親を悲しませることが罪や罰を与える対象になる国もあるのです。
世界の親孝行事情
日本では、親不孝だから罪になるなどということはありませんが、江戸時代などでは親への障害は磔か死罪、主(親、兄、目上の男性親族)殺しは鋸引きの上、磔とされています。
親族などへの犯罪は通常よりも重罪に処せられています。
親孝行や親不孝とは異なりますが、親や目上の親族には敬う必要があったのです。
世界の親孝行事情について見ていきましょう。
シンガポール(親孝行の義務化)
シンガポールでは1996年に世界でも珍しい両親扶養法が制定され、子どもが親を扶養しない場合には裁判所に扶養請求の申し立てをすることが可能であるというのです。
子どもは老人ホームなどに親が入居している場合などは月払いや一時金などで親の生活費を払う必要があり、従わない場合には禁固刑や罰金なども科せられるのです。
どうやらシンガポールでは料金の安い老人ホームや病院に親を入れて、支払いを行わない人が後を絶たないということがあり制定されたようです。
中国(扶養扶助(親孝行))
古来より「百善孝為先(よいことをするには、まず親孝行から)」の精神があり、親孝行が美徳であった中国では親の老後を子どもが責任を持つという意識が根強くあります。
しかし日本同様少子高齢化が進み一人っ子政策の反動もあり、親孝行を行うことが難しくなってきています。
親の面倒をみない子どもを親が裁判で訴えるケースも増えているそうです。
2013年に「高齢者権益保障法」が改正され、「高齢の親と離れて生活している子供は定期的に帰省して、親に顔を見せなければならない」という条文が新たに追加された。
物心両方で親孝行をすることを促しているのです。
しかし、法律で親孝行をすることを決められることに反対の声もあり、法律だけではなく周囲の変革も必要であることが分かります。
イタリア
イタリア人男性の70%以上は親と同居しており、マザコンであるなどといわれています。
イタリア人男性は母親を特に大切にし、家族との繋がりもとても大切にしています。
男性からすれば母親を大切にしてなぜ悪いの?と思うかもしれませんが、女性ならば自分を一番に思ってほしいと感じてしまうでしょう。
それが自分の子どもを大切にすることで、子どもが自分を大切にしてくれるということに繋がるのです。
イタリア人男性の「マンマ(母親)」愛はそれほど強いということになります。
宗教での教え
儒教・聖書の教えでは、親を敬うことが推奨されています。
聖書では「親に感謝をし、権威を認め、敬意を払い、親の世話をする」ことを繰り返し命じています。
儒教でも親を敬うことが推奨されており、親が亡くなった時などは3年間喪に服したといわれます。
宗教の教えが親を敬うことを義務化しているので、「親を敬うことは必要な事」だと決めて親孝行を法律や義務化する国が生まれたのかもしれません
昔の日本人は親孝行だった?
今よりも親を大切にすることが重要とされていた日本人ですが、親のありがたみというのは若いうちはなかなか分からないもので、これは今の日本人でも同じかもしれません。
今回は古典落語の名作「二十四考(にじゅうしこう)」をご紹介します。
あらすじ:
江戸に住む大酒飲みの八五郎は長屋でも評判の乱暴者。
この日もささいな夫婦喧嘩から女房に手をあげたあげくに実の母親を蹴りつけたというのだから穏やかじゃない。その話を聞いた大家は怒り、お前みたいな親不孝者は今すぐこの長屋から出て行けと叱った。
しかし八五郎は応じない。そんな八五郎に大家は親孝行がいかに大切か説き始めた。
「その昔、唐土(もろこし)に王祥、呉猛という若者がおった・・・」
大家は唐土の、特に孝行の優れた24人を取り上げた書物「二十四孝」のエピソードを話すのだが、八五郎はふざけて真剣に聞こうともしない。。。
大家は昔は親孝行をしたものには奉公所から褒美が出たものだ、もしお前が親孝行したら小遣いをやろうと言うと、八五郎が豹変。。。親孝行してきます、と飛び出した・・・
帰宅した八五郎はさっそく、クソババァではなく母上と呼んでみるのだが、気味悪がられる。
王祥の親孝行の奇跡、親が鯉が食べたいと言うが貧乏で買えない。。そこで池に行き、氷の張った上に裸で横になり体温で溶かしたら、鯉が一匹出て来た。まさに親孝行の徳。というエピソードを思いだし、母親に鯉食べたいか?と聞くも川魚は嫌いだと言われる八五郎。
その後も大家から聞いた話を色々試すのだが、話がごっちゃになり全く上手くいかない。
することがもう無いなと思っていた八五郎だったが、呉猛(ごもう)のエピソードを思い出した。
呉猛の家は貧乏で蚊帳が無く、母が蚊に悩まされて眠れないのを心配し、安酒を買ってきて裸になり酒を全身に吹き付けた。蚊は酒の匂いに集まる為、呉猛の身体もただではすまない筈、しかしその夜は蚊が一匹も出なかったという。親孝行の奇跡。
八五郎は寝る前、俺もやってみっかと酒を身体に吹き付けたのだが、残った酒がもったいないと飲んでるうちに止まらなくなり泥酔。。。ぐーぐーと寝てしまった。
翌朝・・・
「おおっ!こいつはすげぇ。ひとつも刺されてねぇ。昨夜は一匹も蚊が出なかったんだ。これが親孝行の徳ってやつだ。なぁおっ母さん!」
「なにを言ってるんだい。あたしが夜通し団扇であおいでたんだよ」
出典:落語のススメ
二十四考とは中国の厳の時代に郭居業(かくきょぎょう)がまとめたと言われる24人の孝子(親孝行)の列伝であり、江戸時代には道徳教育の一環として中国の書物が使われていました。
登場人物である八五郎は大家からのお金欲しさにわか仕込みの親孝行を行おうとしてことごとく失敗しています。
成功していたとしてもにわか仕込みでは徳を積んだともいえませんし、この話のオチでは母親が息子が蚊に刺されないようにと一晩中団扇で仰いでいたというではないですか?情けない息子であるというものです。
嫁や母親にまで手を上げるような奴にはいくら親孝行を説いても伝わらないものなのです。
こういう人間は江戸時代だけではなく今でもいるのですが、落語の噺なのでこの後はよく分かりませんが、江戸時代であれば親に手を上げるような行為をすれば捕まります。
そして通常よりも厳罰が与えられます。
親に手を上げるなんてもってのほかであり、その事実を知る第三者(大家さん)が奉行所に通報すれば一大事となってしまうはずです。
このような親(嫁)を大切にしないような息子はいつかはバチが当たるでしょう。
親孝行は世界共通
親に感謝して敬うことや親を養うことが子の役目である、これは世界共通のようです。
確かに親を大切にすることや親孝行は必要ですが、過剰すぎる行為はいかがなものかな?と感じてしまうかもしれません。
親不孝であるからといって子どもを嫌う親はいないので(あまりに酷ければ勘当されてしまうこともあるかもしれませんが)法律で義務化してしまうのはどうなのだろうと思うのも仕方がないです。
親孝行がすべての善行の基本であるという考えも世界共通のようなので、善い行いは親から始めて周りに広げていくものと理解をして親孝行を行ってほしいものです。
親孝行は周りから無理矢理やらされるものではないし、そのようなことで親孝行をされても親は嬉しくありません。
まとめ
世界には親孝行を義務化する国などもあり、親孝行がいかに大切なものであるかが伺い知ることができます。
親のありがたみというのは近くにいると実感できないし、若いうちも理解できないかもしれません。
親孝行の必要性や親孝行を行うことが難しいと感じるかもしれませんが、親に感謝をする気持ちを持つことが大切だということが伝わればと思います。
二十四考のように親不孝な行動ばかりしていても親にとってはかわいい子どもなので、甘やかしてしまうものなのです。
それが親ってものなんですね。
家族や親孝行とは無縁と思っていましたが、結婚し子どもが生まれると親と親孝行がとても大切なものなのだなと思うようになりました。
なかなか面と向かって親孝行や家族に感謝するのは恥ずかしく感じることもありますが、恥ずかしがらずに親孝行していきたいと思っています。
まずは家族も親も元気が一番!ですね。