100日間、毎日母に送った手紙。父の介護で知った親孝行とは。

母と息子 40代にとっての家族

「あなたにとっての家族とは?」
様々な「家族観」に触れることで自分の「家族観」を見つけていく家族孝行バトン。

みなさんは、ご両親に手紙を書いたことはありますか?

かく言う私も書いたことがあるようなないような…
記憶をたどってみてもあまりピンと来ません。
普段はスマホで済ませてしまいがちなコミュニケーションですが、
改めて手紙を書くことの大切さを教えていただきました。

塩中一成さんの親孝行ショートストーリーです。

プロフィール

名前:塩中一成
生年月日:49歳
職業:大阪市会議員

「生んでくれてありがとう」じゃなくて「生まれてきてくれてありがとう」まで。

病室のベッドでの家族写真

母に手紙を書こうと思ったきっかけは父が倒れたことでした。

父が突然倒れたのですぐ帰ろうと思いましたが、母が大丈夫というので一週間ぐらいしてから帰ったんです。
そうしたら母は、父が倒れた原因が父にあるとずっと言うんですね。
話し相手がいなく1人で抱え込んでいたんだと思います。

今までであれば「そんなんしゃーないやん」と僕が言って喧嘩で終わってたんですけど、「うんうん」と聞いてたんです。
聞いていたら、最後「こんなん言ってもしょうがないよなぁ、こんなん言ったところでお父さん治るわけちがうしなぁ」と母が言ったんですね。
最後まで聞くと、自分でも分かってることだけど愚痴でも聞いてほしかったんだなぁと。
すぐ帰ってこなくていいと言われましたけど、「1人で寂しかったんやろうなぁ、もっと早く帰ってこればよかった」と思いました。

父は倒れてから動けなかったので一週間ぐらいお風呂に入っていませんでした。
介護申請が降りるのには時間がかかるし、実費で呼ぶのもうまく時間がとれないので、僕がお風呂に入れてあげることにしたんです。

ふたりとも素っ裸になって、僕が父をおんぶして。

その時に父が、「うわぁ、気持ちええわぁー」って言ったんですよね。

僕は市会議員になる前は柔道整復師として事業経営をしていたので、父にマッサージをよくしていたんです。マッサージし終えると、良かった、楽になったと言ってくれていたんですけど、僕は今まで治療をして、この時ほど気持ちええって言われたことがなかった。

治療をして、やってあげてるっていう風に思っていたんです。

大変だったし、父をお風呂になんか入れたことがないし、バリアフリーの家でもないし。
でもお風呂を沸かして、父親を背負って、素っ裸でお風呂まで行って入ってってなったら、あぁこんな単純な、というかね。

今まで親孝行をしてると僕は思ってたんですけど、違ったんだなと。

本当に親がしてほしいことをするというのは、母親の話を最後まで聞いてあげたりとか、父親を治療してそれで楽になったとかそういうことではなくてお風呂に入れてあげることで、こんなに喜んでもらえるんだと。

僕は今まで、「生んでくれてありがとう」というのが親孝行だと思っていたけど、そうじゃなくて、「生まれてきてくれてありがとう」と親に言ってもらえるまで、親孝行は続けなきゃいけないなということを、そこで気づかせてもらいました。

母親も大変だろうから父親は施設に入ってもらったんです。
でも、やっぱり母親も元々二人で住んでいたから、急に一人になってすごく元気がなくなってしまって。
いつも喧嘩ばっかりしていたのに、相手がいなくなって寂しいのかどんどんこう、元気がなくなっていって、「元気だせー」って電話もしてたんですけどね。

なかなかそれが回復せずにいる母親を見て、そこで100日間母に手紙を書こうというのを決めました。
7月1日から書いて10月8日までの100日間でした。

電話をするのも簡単ですけど、そういうのじゃなくて残るほうがいいかなと思いました。 毎日毎日手紙を送ったら、母親も楽しみになったようで、「毎日毎日届く」と喜んでくれていました。

それから、どんどん元気になってきて、外にも出れるようになって。元気になってくれたんで、やって良かったなぁと思います。

今まで、電話をしたり話をしたり会いに行ったりはしていましたけど、その100日間は毎日毎日母親のことを考えるわけですよ。最初の方はまだ書くことがあっても、だんだん書くことがなくなってきて、母親の好きなものとか母親のことをよく考えました。

はがきと向かい合って、ペンを走らせる時というのは、5分10分のことなんですけど、そういうことを考え続ける習慣ができると、「今どうしてるのかなぁ」とかも考えるようになります。

実際に忙しくて電話ができないっていうようなことはないんだけれども、電話をかけると大層になったりとか、頼りがないことが元気の印じゃないけれども、そんな細かく毎日毎日しなくていいものだと思ってたんですけど、実はそうではなくて。

毎日手紙を書く、そういうことだけでも喜んでもらえるということがすごく実感できました。

親孝行というと、記念日に何か送ったりとかそういうのは当たり前にはやっていたんですけど、だけどそういうものではなくて。

もっと、一緒に居てほしいときに一緒に居たりとか、電話したら他愛もないようなことが話せたりとか単純なことだと思います。

一緒に親と暮らしている人ですら、やっぱりそうやってお風呂に入れてあげるとか、毎日毎日手紙を書くっていうこととか、そういうことをしていない人が多いですよね。

僕はいろいろなところでこの話をさせてもらってるんですんけど、そういうところで気が付いてくれて、「自分もやりたい」とか「やってみます」という感じで、やられてる方が割とたくさんいらっしゃる。

やっぱりこう、「みんな親孝行がしたいんやな」という風に感じています。

やり方が分からないとか、特別なサプライズ的なことをしなければならないとか思ってる方がけっこう多いみたいですね。でもそんなことを別に親は望んでないというかね。

「元気やったらいいよ」という言葉の中に、「毎日何してるんやろね」ということもあると思うし、一緒に住んでいても、例えば妻とかにもそうですけど仕事の話を1から10まですることもないし、ちょっとしたことで喧嘩したりとか愚痴っぽく言われたら、「もうそんなんいうなや」という感じを出しちゃって向こうがそれ以上言えなくなったり。身近な人にこそちゃんと毎日コミュニケーションをとることが大切だなと、そういうことをすごく感じた100日間でした。