大事なのは「好き・嫌い」の感情を横に置いて冷静に親と向き合うこと

30代にとっての家族

「あなたにとっての家族とは?」
様々な「家族観」に触れることで自分の「家族観」を見つけていく家族観バトン。

今回は、当サイト「かぞくのとき」の管理者であり、2歳になる娘さんの子育てに奮闘する坂本草さんにお話を伺いました。

「家族の在り方は多様であること」、「親孝行は連鎖する」といったことを、様々なエピソードを通じて感じることができたインタビューになりました。
ご家族との関係を見直すキッカケにしていただけたらと思います。

目次

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プロフィール

名前:坂本 草
年齢:35歳(2021年1月現在)
職業:株式会社青い鳥 「かぞくのとき」ディレクター
出身:大阪府

坂本さんのプロフィールと経歴を教えてください

大阪で生まれて、高校卒業まで関西圏で育ちました。もともと両親が大阪で、私が4歳か5歳の頃に京都へ引っ越して、高校進学で和歌山の山奥に行きました。

それから沖縄の大学ですね。高校が時事問題とかを積極的に扱う学校で、カリキュラムの一環で沖縄に行くことがあったんです。そこで沖縄戦や基地問題に興味を持って「もっと深堀りしたい」と思ったのと、大学進学のタイミングで全国からパンフレットを取り寄せて、大学名見ずにブワーって読んで「あ、ここいいな」と思ったのが沖縄大学だったんですよ。沖縄のことも勉強できるし、「これは沖縄に呼ばれてる!」と思ってそこへ進学しました。

大学を卒業したあと、半年間は京都の実家に戻っていたんですけど、改めて就職活動をする中で、
もう一度沖縄からスタートを切ろうと思って。大手の書店が沖縄に初出店することを知って、昔から本が好きだったので、そこに応募しました。後から知りましたけど、大手企業の出店だったので、倍率8倍超えだったとか。運良く採用してもらい、その時の店長とは今も定期的に連絡をとっています。

沖縄で仕事をする中で、その後のキャリアの事を考えるようになって、30歳になる年には東京で就職しようと決めました。東京に行くために入社した会社を数ヶ月で辞めて、次に入社した前職の会社で当時そこで働いていた中村(青い鳥代表)に出会いました。それから結婚・妊娠出産・離婚を経て、2020年12月から本格的に青い鳥にコミットしています。

ご家族について教えてください

両親、私が長女で妹・弟がいます。両親は健在ですが離婚していて、母は京都、父は大阪にいます。
離婚したのは私が沖縄にいるときで、母からすごくテンションが高いメールがきました。絵文字モリモリで「離婚しました!」「スッキリしました!」みたいな感じの内容でしたね。

もともと、父があまり素行が良くなかったり、アルコールが手放せなかったこともあって、常日頃から両親が喧嘩している感じの家庭でした。ある時、父があんまり帰ってこなくなってたんですよね家に。

それで、父がいなくなる年の元旦に、私が沖縄から実家に帰ってきていて、「いいかげんにしいや。出ていくんやったら出ていく。出てかへんのやったら出てかへん。はっきりけじめつけ。」って説教したんですよ。父は「ちゃんとする、家にいる」って言ったんですけど、その年に帰ってこなくなったみたいです。私からすると「なんやねんあいつ、筋とおさんと」って感じでした。そういうことがあってからの離婚だったかと思います。

ご両親の離婚後、家族の在り方に変化はあったんですか

「家族」っていうんじゃなくて、母のとらえ方としては「縁のあった人」。
母自身が、周りの人をもっとハッピーにしていきたいというか、浄化したいという風に思っていて。私も離婚で出戻っちゃったし、弟も借金で困っている時期があったり、父もアルコールを離せないから、母は問題アリの家族を「私がなんとかしなきゃ」っていう使命感に燃えているというか、「私の仕事」みたいに思っている。社会的な弱者の集まりみたいな感じですね 笑。

仲は今でもいいし、「あのときああだったよね」とか「このときああだったよね」とか、そういう話を家族間で結構しているので、遺恨があるとか不仲だとかいうことは全然ないです。父と母は今でも連絡を取っていて、今年のお正月も(父が)京都に来るって話もあったんですけど、コロナもあったし、めちゃくちゃ寒かったので結局来ず、今年はまだ会えてないですね。

ご両親との思い出や、影響を受けたことはありますか

土日とかは、父が結構遊びに連れて行ってくれていましたね。保育園から小学校3~4年生くらいまでは私の友達も含めて一緒に車で遊びに連れて行ってくれていました。弟が生まれてからは弟も一緒に遊びに行ったりしてましたね。私はお父さん子で、父の味方でした。

基本的に私には甘い父だったんですけど、私が自分から行きたいと言った塾をサボって遊びに行ったのがバレたことがあって。家に帰って玄関入った瞬間に、はっ倒されました。顔面パーンてされて「嘘はあかん!」って言われました。中学校のときにヤンチャしたときよりも怒られましたね 笑。

考え方の影響で言うと、父も母も左寄りというか、戦争反対とかそういう感じが強いタイプ。環境問題や時事問題に興味を持っている2人でした。私が行っていた保育園もそういう感じで、戦争映画のアニメとかを確か年に1回ぐらいやっていたと思います。そういうのに母に観に連れられて行っていたので、時事問題に強く反応するようになりました。私が高校生の頃、中東がひどい状況だったかと思うんですけど、その時私のおじさんが行っていたらしくて。「お前も一緒にパレスチナ行くか?」と言ってくるような父だったので、世間一般の親と比べて、変わってる人だったと思います。大学時代に沖縄で学ぶことになったのも、そういう両親の影響があったと思います。

親孝行エピソードはありますか

3年くらい前ですかね、両親2人が同い年なので二人揃って還暦のお祝いをしたんです。妹の子供が当時1歳半ぐらいだったので、安全にゆっくりくつろげる個室があるお店を京都で探して。そこに、すでに離婚して大阪にいた父と、東京にいた弟と私と私の夫と、妹家族でお店に集まりました。予算を伝えて料理と飲み放題をお願いしたら、結構いいお料理を出してくれて。最後はケーキも出してくれて、母はお料理がおいしかったと喜んでました。父はどっちかっていうとアルコールがあればオッケーな人なので 笑。お店のアンケートに答えたら、ランチのお試し券が当たったので、もう一回母と再訪して、「あのときのお料理おいしかったよね」って話しました。

このあいだ、母と一緒におばあちゃんの家を一緒に片付けていたら、母は母で、おばあちゃんとおじいちゃんの還暦のお祝いをしてたみたいで、母の字の料亭のお品書きみたいなのものが出てきたんです。自宅で十品くらいの食事と、母が書道をやってたので手書きのお品書きを、おじいちゃんとおばあちゃんの2枚、準備してお祝いしたみたいで。自宅でそれをやってたのもすごいし、お品書きが残ってたのもすごい。こんなのやってたんだってびっくりしました。母もそういう、「何かをしてあげたい」っていう気持ちが強いですね。

「親孝行」という言葉から、どんなことを考えますか

親孝行っていう単語を意識する前から、ずっとそういうことをやってきてたと思うんです。小さい頃から母はおばあちゃんに母の日に何かあげたり、自分もそういうことが習慣化しているので、「親孝行」っていう単語をピックアップしてどうこうっていうのはないんですよね。

私はおばあちゃん子でもあったので、小学生くらいから母の日には、母とおばあちゃん2人にプレゼントを渡しています。特別気合を入れて渡したってのはないかな。母やおばあちゃんが必要と思うものじゃないと要らないじゃないですか 笑。だから、渡したものがいいときと悪いときの反応もわかりますね 笑。今はおばあちゃんも近いところに住んでいるので、ほしいものが会話の中で分かる。本当に必要なものを買いに行けます。近くに住んでいる利点ですね。

他におばあちゃんにしてあげて、よかったことはありますか

私20歳のときに、リゾートバイトで箱根のホテルで働いていたんです。
それで、「せっかく箱根にいるんだし」っていうことで、おじいちゃんとおばあちゃんを箱根に招待したんです。新卒入社の子よりよく働いていたので可愛がってもらえて 笑、私の部署の偉い人が掛け合ってくれて、セミスイートみたいなちょっといい部屋を取ってくれて。3人でその部屋に泊まって、晩ごはんも込みで30,000円くらい。おばあちゃんからしたら、部屋も広いし、食事も美味しいものたくさんだし、温泉にも入れたのに、「こんな金額でいいの!?」って喜んでいました。今でも、そのホテルが箱根駅伝のときにテレビに映ると「映ってたわ!」って言ってくれるんですよ。やってよかったなと思っています。

ご自身のお子さんには、どのように育ってほしいですか

娘が一人いるんですけど、一人でちゃんと自立というか、自分のことをちゃんとコントロールできる人間になってほしいかな、と思います。身の回りのことというか、自分がしっかりしていたら周りのことも支えてあげられるし、そういう人間になってくれたらいいですね。

私の影響なのか、娘は外面(そとづら)が良くて、保育園だとおりこうさんです。大声も出さないし、「イヤ」とか言わないみたい。初日から泣きもせずにバイバイできたし、お昼寝もおっぱいなしで寝れるじゃん!みたいな。その代わり、家の中だと暴君です 笑。

今は絶賛いやいや期。魔の二歳児相手に毎日ブチギレてますけど、自分が我慢することなく、自分の気持ちと折り合いをつけて、生きていってほしいなと思いますし、「あれしたいこれしたい」を、できるだけ制約せず叱らず穏やかに子育てしていきたいなと思っています。

同世代の方に向けてメッセージをお願いします

親孝行が大事だよっていうのもあるんですが、親との関係をちゃんと考えて見直すことも大事だと思います。自分が育った幼少期の環境とかを振り返ることにもなると思うし、自分自身も改められるというのがあるので、「好き」「嫌い」っていう感情を横に置いて、冷静に親と向き合うことが大事かな。
そういうところを中にはスルーしている人いると思うんですね。それで、見直す中で、「やっぱりお世話になった」っていうのが出てくれば、それはそれで形にして還元しましょうという感じですかね。

ざっくりとした言い方ですけど、親との関係がちゃんと良好な人は、成功しているというか、人としてちゃんとしているような気がするんですよね。なので、いろんな環境の人がいると思うけど、親との関係をちゃんと見直していったらいいのかなと。
青い鳥では、そういった見直す機会やきっかけを提供していけたらいいなと思っています。